経皮的冠動脈形成術(PCI)と薬剤溶出ステント

狭心症や心筋梗塞など狭くなった冠動脈を先端に風船のついた管(バルーンカテーテル)で拡げる治療方法です。また、薬剤溶出型と呼ばれる特殊な金属のメッシュ構造の筒を狭くなった部分に留置し再狭窄を防止します。

Drug Coating Balloon(薬剤コーティングバルーン)

病変部を拡張するバルーンの表面に抗がん剤の一種である低容量の薬剤を塗布する事により狭窄閉塞した血管を拡張した後、一定の確率で起こる再発を減らす目的で使用されるものです。

DCA(Directional Coronary Atherectomy):方向性冠動脈粥腫切除術

カテーテルの先端にステンレスの筒があり、この一側に小さな細長い窓が開いていて、その窓を動脈硬化病変に当てた後、高速回転(毎分約6,000回転)するカッターで病変を切除します。切除された動脈硬化病変は最先端部分にある円錐型のコーンの中に回収され、体外に取り出す事ができます。従来のバルーンによる治療法と比較して、窓の向きを変えることにより偏心性(偏った方向)に存在する粥腫に対して効率よく選択的に治療が行え、バルーンでは十分な拡張が困難な冠動脈の入口の病変や枝分かれしている病変に対して効果的な治療です。当院は、確実に方向性を把握する技術を持っており、患者様により安全な治療を提供しております。

Rotablator

先端にダイヤモンドをちりばめた高速回転ドリルで、冠動脈の狭窄病変を削るデバイスで、高度な石灰化病変が適応となります。その使用効果は絶大ですが、重大な合併症も起こりうるため、習熟した医師が行わなければ危険が伴います。当院の岡村篤徳医師は、この分野でプロクターを務めており、国内外でのロータブレーター治療において若手医師達に徹底した教育を行っており、多くの優秀な循環器内科医師を輩出しております。

Diamondback 360 Coronary Orbital Atherectomy システム

Diamondback 360 Coronary Orbital Atherectomy System (OAS)は、冠動脈重度石灰化病変をダイヤモンドコーティングされたクラウンが高速で軌道回転することにより、石灰化プラークを減少させ、その後のPCIを容易にするデバイスであり、軌道回転することでクラウンサイズよりも大きく削ることができ、また前方向だけでなく後方向に引いても削ることができるのが特徴です。

Shockwave

Shockwaveによる治療は約30年の歴史があり、もともとは1980年代より腎・尿道結石の治療に用いられました。本邦では、2022年より冠動脈病変の治療に使用可能となり、適応病変の選択は必要ですが、より安全な石灰化病変の治療が可能なりました。

インペラ(IMPELLA)

左心室に留置し循環を補助するための超小型のポンプを内蔵したカテーテル装置です。日本では2017年9月に保険適用となり、重症心不全や心原性ショックなどの治療に積極的に取り組んでいる当センターでは2021年4月から使用可能となっております。そして、インペラを用いた治療には、循環器内科と心臓血管外科が連携して取り組んでおります。

先進的取り組み

当院が開発したPCI治療法のご紹介

新たな慢性閉塞性病変(CTO)のPCI治療法・器具

  1. Tip detection法: ガイドワイヤーの先端を見たままに正確に誘導する方法です。
  2. AnteOwl-IVUS: Tip detection法の標準化のために当院とテルモ社で開発したCTO特化型IVUS(血管内超音波)です。

Okamura A. JACC. Intv. 2020;13:67-75.

AnteOwl-IVUS: 薬事・保険償還を得て2019年末より、世界に先駆けて、当院で使用開始し短時間の手技で、ほぼ全例で成功しております。

CTO病変内で、リアルタイムにガイドワイヤーを観察して正確にtargetに誘導し、確実な再疎通を可能にします。

頻脈性不整脈

高周波カテーテルアブレーション

頻脈性不整脈の病態と治療ですが、頻脈性不整脈は、心臓の中に余分に電気を伝える経路、異常な興奮をする部位があることが原因で発症します。その異常な原因を取り除き、根治させることができるのが、カテーテル治療です。頻脈性不整脈の多くは、カテーテル治療で、根治させることが出来ます。カテーテルを用いた不整脈の治療法は、カテーテルアブレーションとも呼ばれ、ここ10年位で急速に進歩し、普及しました。太さ2mm程度の先端に電極がついたカテーテルを用いて、異常な電位を診断したり、処置をしたりします。
足の付け根などに局所麻酔し、そこの血管から、電極カテーテル数本を、レントゲンを見ながら 心臓まで挿入します。心臓の中で直接心電図をとり、不整脈の原因部位を探します。原因部位がわかったら、通電用カテーテルを押し当て、高周波電流を通電して焼灼し、不整脈を根治させます。通電でカテーテルの先端は 40-60度になります。通電は30-90秒間続けます。その操作を必要に応じて数回~数十回行います。カテーテル治療で根治可能な不整脈は、発作性上室性頻拍症、WPW症候群、心房頻拍通常型及び非通常型、心房粗動、発作性及び慢性心房細動、上室性及び心室性期外収縮の一部、心室頻拍及び心室細動の一部です。カテーテル治療の利点は、今まで不整脈の治療は、薬を飲むか、我慢して様子を見るかのどちらかでした。薬の有効率は、40%程度です。薬は不整脈を根治させることはできません。有効であっても服用を止めると効果がなくなります。カテーテル治療は、現在、最も有効性の高い治療法で、ほとんどの不整脈で根治を目指すことができます。カテーテル治療でも治りにくい不整脈があります。治療後に再発する場合があります。術後の経過観察を含め、4日間以上の入院が必要です。心臓手術の中では最も安全な部類ですが、稀に追加の処置を要したり後遺症が残る合併症が起こることもあります。その頻度は0.5%程度です。

冷凍アブレーションシステム

発作性心房細動の90%以上は、肺静脈から起こることが知られています。肺静脈を電気的に隔離することで心房細動を治療することが出来ます。
今までは高周波通電を行い、熱でやけどを作ることにより、治療を行っていました。これを高周波カテーテルアブレーションと呼びます。
新しく、冷凍バルーンカテーテルを用いた治療が行われるようになりました。これはバルーンを亜酸化窒素ガスで-40~50度に冷凍して低温やけどで肺静脈を隔離する方法です。この治療について治療時間は2時間程度です。大腿静脈よりカテーテルを心臓まで挿入します。局所麻酔と鎮静剤で行います。治療後は5時間程度のベッド上安静が必要です。治療後は3日目に退院となります。この治療法の良いところは、治療成績は、高周波による治療と同等です。治療中の痛みが、高周波に比べると少ないです。治療にかかる時間が、平均30分程度短いです。アブレーション治療の合併症である「脳梗塞」「食道関連合併症」が、少なくなることが期待できます。この治療法の欠点は、発作性心房細動への治療しか認められていません。左心房と肺静脈の形によっては、治療が難しい場合があります。 治療前に心臓CT検査で心臓の形を確認します。治療の合併症として、横隔膜の麻痺(多くは一時的なものです)が高周波での治療よりも多いです。

徐脈性不整脈

リードレスペースメーカ 植え込み治療

リードレスペースメーカは、カプセル型で本体を皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて、小さなフックで直接心壁に取り付けられ、先端の電極を通じて電気刺激を送りペーシングを行います。バッテリーと刺激電極は一体化され、1.75g、1ccまで小型軽量化されています。従来のペースメーカは、左前胸部に本体を植込み、静脈を経由して心臓内部に「リード」を留置する必要があります。そのため、リード断線や老朽化、血管の閉塞といったリード関連と、左前胸部の傷やペースメーカ本体の膨らみなどの美容上の問題が生じます。しかし、このリードレスペースメーカは、外科手術による胸部の傷もなく、外からは装置のふくらみもないため、装置を意識することなく生活できます。また、電池寿命は約10~14年で、MRIの撮像が可能です。当院は施設認定をうけております。

ペースメーカ治療

徐脈性不整脈は洞結節(自然のペースメーカ)の異常で、洞結節からの興奮が起こらない、または起こりにくい状態や、刺激伝導系の途中が切れて、心室に興奮が伝わらないなどにより、脈が遅くなる疾患です。時に心停止を来す疾患で、めまいや失神発作を来たします。ペースメーカはこのような徐脈性不整脈における調律の異常を補整します。本治療法は局所麻酔下に、右あるいは左前胸部皮下にペースメーカ本体を植え込むとともに、心腔内(右心房あるいは右心室)に1~2本のペーシングリード(導線)を挿入・留置し、徐脈を改善するものです。局所麻酔下に施行し手術時間は約1~2時間です。

植え込み型除細動器(ICD)

植込み型除細動器(ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator)は、体外式徐細動器を小型化してペースメーカと同じように体内に植込むようにしたものです。
ICDは、患者さんの心臓の電気的活動を常に監視し、命を危険にさらす心室頻拍や心室細動を感知するとすぐに電気ショックによる治療を行い、心臓の働きを正常に戻すことで突然死を予防します。抗不整脈薬による薬物療法が併用されることもあります。当院は施設認定をうけております。

両心室ペーシング治療

高度に心機能が低下している重症心不全症例のなかには右心室と左心室間に収縮のタイミングのずれが存在することで、さらに心機能を悪化させることがあります。このような場合に右心室と左心室にペーシングリードを挿入し同時にペーシングを行うことにより収縮のタイミングのずれを補正し心機能を改善させる治療(両室ペーシング治療)ができるようになりました。我が国においては重症心不全に対する治療法として期待されています。当院は施設認定をうけております。

WATCHMAN(ウォッチマン)

左心房から耳たぶ状に突出する左心耳は、心房細動による血栓が形成されやすい部分で、心房細動が原因の血栓の9割はこの左心耳で発生します。この左心耳を閉鎖するよう設計されたデバイスをWATCHMANデバイスといい、開心術の必要なくカテーテルで治療できます。術後は、術後約1か月で表面が内皮化するといわれています。そのため、術後45日間は抗凝固薬を継続いただき、その後左心耳が閉鎖していることを確認して、抗凝固薬を中止します。WATCHMAN植え込みに関するご相談、ご質問はかかりつけの先生と相談の上、当院までご連絡ください。

TAVI(タビ)

大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている大動脈弁が石灰化などにより硬くなり十分に開かなくなる病気です。動脈硬化が原因であることが多く、近年では高齢化に伴って増加傾向にあります。この病気は、無症状のうちに心雑音の指摘で発見されることもありますが、狭窄が進行すると、息切れ、胸痛、失神、動悸や呼吸困難などの心不全の症状が出現します。狭心症状が現れると5年、失神が現れると3年、心不全をきたすようになると2年が平均余命と言われています。また重度大動脈弁狭窄症の特徴として突然死が生じることもあります。重度大動脈弁狭窄症に進展し症状を自覚するようになると比較的早く進行することがわかっています。自覚症状を認める場合には早期の治療が必要です。

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)

大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は高齢など周術期リスクが高い方に対する低侵襲治療として開発された治療法で、本邦では2013年より保険償還されています。根治的な治療でありながら傷口が小さく、治療時間や入院日数が短いなどのメリットがあります。近年、デバイスの進歩や手技の安定化により良好な治療成績が報告されており、適応の対象となる症例も拡大されています。当院では、循環器内科・心臓血管外科を含むハートチームが長期的な予後を改善すべく、様々な議論の上で各患者様にとって至適な治療選択を提示できるよう努めています。

治療までの流れ

大動脈弁狭窄症の診断や重症度は心エコー図検査で評価を行います。また、TAVIの具体的な治療方法の決定には造影CT検査での評価が必須です。この他に心電図や採血検査などを行い、データを総合的に評価しハートチームで適応を決定します。ハートチームでの方針に加えて患者様や家族様の希望の聞き取りを行い、TAVIを決定します。
各種の検査は外来で行いますが、遠方在住や足腰が悪いなどの理由で通院検査が困難の場合は入院で対応致します。

入院期間の目安と退院後の管理

入院期間の目安は1週間程度が目安です。治療後は翌日には歩行開始し早期退院を目指します。ご高齢や体力の低下がある場合などは追加でリハビリテーションを行うなど、患者様の体力レベルに合わせてハートチームでサポートします。
退院後は外来で弁機能・心機能の評価を定期的に行います。

治療費用に関して

TAVIは健康保険が適用されます。詳しくは病院窓口にてお問い合わせください。

画像提供:エドワーズライフサイエンス合同会社
受付時間
平日 : 午前9時〜11時30分、午後13時〜16時
土曜 : 午前9時〜11時30分
*詳しくは各診療科案内の外来医師担当表をご確認ください。
休診日
第3土曜、日曜、祝日

〒530-0005 大阪市北区中之島4丁目3番51号
Nakanoshima Qross内

06-6676-8215(代表)